転職サイトや事業会社の採用ページなど、データアナリスト職の募集要項には必要スキルがいろいろ書かれています。
実務に触れた方ならまだしも、これからデータアナリストを目指そうと思う方には、あまりに未知な部分もあると思います。
今回は、データアナリストに求められるスキルがないとどうなるのか。
私の身の回りで時々起こる失敗事例なども交えて、記事にしてみたいと思います。
データアナリストに求められるスキル
データアナリストに求められるスキルは、以下の定義が一般的である認識です。
- ビジネス:課題背景を理解した上でビジネス課題を整理し解決する力
- サイエンス:情報処理、人工知能、統計学などの情報科学系の力を理解し使う力
- データエンジニアリング:データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装、運用できるようにする力
三位一体でどれも長けていることは素晴らしいことですが、これらが高いレベルで備わった方は、周囲を見渡してもそんなに多くはいないのではないでしょうか。(少なくとも私の周りには片手で数えられるほどの人数です)
データアナリストを目指そう!と考えたときに、文系出身者の方は特に「サイエンス」「エンジニアリング」スキルハードルの高さに尻込みしてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
スキル習得が不十分だと何が起こるか
それぞれのスキル習得が不十分だと、実務面ではこんなことが起こりがちです。
ビジネススキルが欠けていると
- 事業構造やプロダクト構造が理解できていないが故に、分析時のフォーカスポイントにズレが生じる。
- 結果、分析プロセスに考慮漏れが生じ、価値のないアウトプットが生まれてしまう。
サイエンススキルが欠けていると
- データを正しく比較できず、分析結果として誤った答えを導いてしまう。
- 導いた答えの説明をアナリスト自身ができない。
エンジニアリングスキルが欠けていると
- データを準備し、整えるプロセスが非効率で分析実務に入れない。
- 誤ったデータに気づかないまま分析が進んでしまう。
これらに限らずですが、私の周囲でもいずれかのスキル不足があるが故に、分析進行プロセスの手戻りや、せっかくのアウトプットをしても「知りたいこととちょっと違う」なんてことがしばしば起こります。
データアナリストを目指そうと思う方へ
ただ、がっかりしないでください。
仮に上記の3つのスキルが不足しているからといって、その道を諦める必要はまったくないと、私は思っています。
スキルやノウハウはあくまで手段。
データを根拠にした「何らかの価値」を提供できれば、データアナリストとして十分に活躍することは可能だと考えています。
事業は「成長」を目的に常に変化を起こすことが求められます。
成長局面でデータアナリストが発揮すべき価値は、「事業の意思決定をスピード感をもって支えることに尽きる」とも言えるのではないでしょうか。
言い換えれば、マーケティング職、企画職、営業職の方も、データを根拠に意思決定を導く仕事を進めているのであれば、すでにデータアナリスト職の一端であるとさえ思います。
データアナリストがもたらす意思決定とは何か
文字通り、事業にとってのネクストアクションとして、何をすべきかを決めること。
意思決定するのは「ヒト」なので、組織のデータアナリストとして取り組む場合は、その「ヒト」が理解できるレベルのアウトプットにしなくてはなりません。よって、論理的なストーリーとしてアウトプットを作ることが不可欠です。
データアナリストの仕事全体をプロセスにするとこんな図になるはずで、3つのフェーズに分かれるイメージです。
- 得られたデータから掴んだ事実(探索フェーズ)
- 課題となる仮説と解決アクションの試行(解決フェーズ)
- 効果検証(検証フェーズ)
PDCAは複数のものが同時に走ることもしばしばで、データアナリストのスキルはここを正確かつ高速で動かすために必要となるものです。
つまり、データを根拠により正しいと考えられる方向に事業や組織の意思決定を導いていくことを可能にするために、アナリストの介在が求められます。
失敗事例から学べること
PDCAのなかの「2」にあたる解決アクションの試行に関連して、私が関わるサービスではABテストの実施がよく行われます。
テストの結果得られたCTRやCVRをAB両者で比較。
「Aがよかった」の観測データだけを見て、「じゃあAで行きましょう」の意思決定がされることも目にします。
これでは、データを根拠により正しいと考えられる方向に事業や組織の意思決定を導いたとは正直言えないと思っています。
意思決定の質は高められたと言えるか。
Aのパターンを全体にリリースして、テスト時と同じ事象は再現しそうかまでを検証して、初めて意思決定の質が高まったと言えるのではないかと考えます。
この背景には「ABテストとリリース」の手段が目的化してしまっていることにあります。テストは、サービスの価値を高めるための手段であり、テストをすることが目的ではありません。
この場合、AとBのCTRやCVRの差が確率のゆらぎの範囲で起きているなら、検定も必要になるでしょう。「どれだけ再現性を説明できるテスト結果であったか」が、アナリストのサイエンススキルに求められる一例です。
自身にこのスキルが足りていないと思えば、統計学を学び、他者にストーリーとして説明できるレベルまで自分の理解をじっくりと補っていけばOKです。
あらためてまとめ
- データアナリストの役割は、データを根拠に事業の意思決定をスピード感をもって支えること。
- 分析は手段。アナリストの役割を果たせたかは事業価値を高めることに分析結果がどこまで寄与できたかで判断される。
- スキルも必要だが、他者の意思決定の質を高めるためのストーリー展開がアウトプットの基礎として必要。
まとまりのない文章にお付き合いいただきありがとうございます。
データアナリストとして活躍する未来を描く方に、少しずつですが追加記事も投稿していきたいと思います。
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