KPIの前年比や前週比は「寄与度」と一緒に把握すると意思決定しやすくなるお話

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記事投稿の背景

事業やWebプロダクトの分析を行う場合、KPI指標の分解からスタートすることは基本セオリーだと思います。

先日、KPIモニタリングをしていた現場の企画担当者から「指標を分解して見ているけど、ここから何を読み解けば良いのか」と相談を受けました。
案外使われていない手法なのかな?と感じ、投稿してみたいと思います。

誰に向けて書いたものか

ビジネスにおける何らかのKPI分析において、以下に該当する方に向けた内容です。(職種は問いません)

  • KPIはモニタリングしているが、「見ているだけ」で気づきやストーリーを組み立てられない
  • KPI指標の「上がった、下がった」だけを頼りに、アクションを決めようとしていることがよくある

簡単なサンプルを題材に

KPI分析にあたって、前年や前週と比較するのは当然のように行われていると思います。ここで、とあるコマース系Webサイトの「売上」を、基礎的なKPIに分解すると下図の状況であったとします。

前年同日比較で、売上は125%で伸びました。Webサイトのパフォーマンスとしては、どこにどんな変化があったかを確認します。

「商品ページ訪問者数」「購入単価」は前年から変化なし。
大きく動いたのは購入者数であり「売上前年比の125%をもたらしたのは、購入転換率(CVR)の改善が購入者数の増加によるものである」と言えそうです。

ここまではよく行われるモニタリング手法かと思います。
また、より分析を深めていく場合に、購入者属性や商品属性で分解するケースもあると思います。

例として、商品ページ訪問者数を新規購入者・既存購入者の属性で分けてみると、下図の結果であったとします。

前年比で購入転換率(CVR)がより高まったのは133.3%の新規購入者側。
売上前年比も既存購入者を上回って伸びていることがわかります。

「新規が好調。新規拡大の戦略も遂行できているし、もっと新規購入者の売上を強めるリソース配分に振り切ろう!」

結果をもとに、この意思決定に持ち込むことも間違いではありませんが、本当に振り切って良いのでしょうか。冒頭でお話した、現場の企画担当者は、まさにそんな意思決定をされようとしていました。

寄与度も一緒に把握する

現状をもう少し正しく把握するために、下図のように売上前年比に対して属性別の寄与度を算出してみます。

結果から見ると、売上の「前年比125%増」のうち23.7pt分は既存購入者によるもの。新規はわずか、1.3ptをリフトしたに過ぎないことがわかります。

新規拡大の戦略には一部で即した結果にはなったものの、新規購入者拡大へのリソース配分に振り切って本当に良いのか。

既存購入者による支えがあった上での前年比125%増ならば、新規・既存両者のバランスを考慮したリソース配分が、意思決定として必要になるのではないかと思います。

現場の企画担当者にも(指標や値は異なりますが)このお話をしたところ、ターゲットを再考の上、次施策の意思決定をされるようでした。

まとめ

今回はコマース系Webサイトを例に、購入者属性を用いて少しわかりやすい例にしていますが、商品属性やエリア属性で分解したり、営業組織単位での分解など、あらゆるケースに適用できます。

目の前で起きた事象に対し、規模の大きさを織り込んで少し解像度を上げた把握がより良い意思決定につながるのかなと思います。

分解した指標の変動をもとに、何がどれだけ全体に寄与したのかまでを一つプロセスを加えるだけで掴みやすくできるケースとして事例の紹介でした。

参考までに、中間指標にあたる「購入転換率(CVR)」にも適用可能です。
計算式は下図のとおりで、属性別の比率を掛け合わせて重みづけを行うと求められます。

せっかく細分化指標にもとづいて得られた観測結果ですので、フルに活用しながら意思決定の質を高めていきたいですね。

指標を細分化する重要性や狙いは、森岡毅さんの下記の書籍でも触れられていますのでご参考までに。

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